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2007年12月13日 (木)

Notes(ノーツ)は,やめときなさい

 悪いことは言わないから,Notes(ノーツ)はやめときなさい。
 大企業なら別であるが,中堅企業向けのツールではない。中堅企業が大企業の事例をまねしても,うまくいかない。身の丈に合ったツールを選びたい。
 もちろん,Notesのメリット・デメリットをすべて承知の上で導入するなら,それはそれでいい。

 いまさらながら,ここでいうNotes(ノーツ)とは,Lotus Notes(ロータスノーツ)のことである。Lotus Development社が開発したグループウェアツールで,文書共有、電子メール、電子掲示板などの機能を持つ。しかし,パッケージソフトのように完成品として提供されるものではない。Notesは,いわば開発環境といったもので,ユーザ企業が,自分たちのニーズに合わせて,個別にプログラム開発する必要がある。
 無計画にNotesを導入した企業では,いま,こんなことが起きている。

-------以下日経コンピュータ2007年7月23日号より抜粋要約--------
 コクヨ・グループでは,2008年3月をメドに,10年間使い続けたグループウェアを段階的に廃止。新システムへと切り替える。コクヨは”エンドユーザー・コンピューティング”を掲げ,Notesを使い込んできた。しかし,これが足かせとなりつつあった。
 コクヨは,約4000人もの全社員がNotes・アプリケーションの開発権限を持ち,延べ2500個ものデータベース(DB)を抱えていた。具体的には,「業務アプリケーション」「掲示板」「文書管理」などのアプリケーションを構築。各職場の社員が必要なアプリケーションを開発し,IT部門に頼まなくても機能の追加や修正が可能だった。これが職場の情報活用を促進した。
 しかし,Notes導入から約5年が経過した2000年ごろから,「もはや,運用していくのは限界」との空気が社内に広がりはじめた。社員が自主的に開発してきたため,全社にどんなDBがあるのかも把握していない。もちろん仕様書などドキュメントもない。開発した社員が人事異動や転職で職場を離れると,誰も保守できない。
 移行で問題となったのは,2500個ものNotesDBの扱いだ。2006年5月から秋にかけ,第1段階の棚卸を実施。2500個のDBをひとつづつ精査し,1600個を存続の候補にした。そして,第2段階として,07年1月,DBの持ち主である各職場におもむきひざを突き合わせて議論し,移行の対象を約1300個まで絞り込んだ。このうち,ワークフローなど”大物”と呼ぶ複雑なアプリケーションは,Javaを中心として独自に構築している真っ最中だ。
NotesDBの将来的な互換性にも疑問を感じた。日本IBM側にバージョンアップ時は,DBの互換性は保証できないと言われた。このため,コクヨはサポートが切れたNotesドミノの「5.0」を使い続け,「6.5」と「7.0」へのバージョンアップをスキップしてきた。
------以上日経コンピュータ2007年7月23日号より抜粋要約------------

 この記事から,どういう読み取れるか。
(1)2000年には,すでに,もう限界という空気になっていたのに,実際に移行対象の絞込みを始めたのは2006年のことである。→いったん,ツールが全社に拡散してしまうと,別のツールに移行するのには,時間がかかる。
(2)Notesは,大企業でさえ,もてあます場合がある。
(3)全社員に,開発権限を与えて,勝手にシステム開発させるようなことをしてはいけない。その場は,システム部門は楽だろうけど,あとで,楽した何倍ものしっぺがえしが来る。

 Notesをもてあましたのは,コクヨだけではない。
 関西電力では,なんと1 万個以上のデータベースの乱立を許してしまったようである。

------以下,マイクロソフトのWebサイトより,抜粋 --------------
「Notes は現場で非常によく使われているシステムでした。しかしそれゆえに、“1 万個以上に上るデータベースの乱立”という問題が発生していました。自由にデータベースを作り込めるため、それぞれが独立していて、データの全社共有ができなかったために、各部署や支店にも同じようなものが存在していたのです。なおかつ当社が使用していた Notes のバージョンでは検索部分が弱いという問題もありました。いったん情報をデータベースに入れてしまったら、他部門からは欲しい情報がどこに入っているかわからない、という状況だった。
--------------------------------------------------

 なお,Notesのユーザ事例として,よくリコーが取り上げられるが,リコーは情報サービス業である。Notesによるシステム構築を商売している会社である。それが本業である。
 Notesを本業とするプロ集団による成功事例など,非情報サービス業には適用できない。

 わたしは,Notes自体にうらみはない。ツールにはなんの責任もない。現場のニーズをくみあげて,情報システム部門がシステム開発すれば,済む話である。
 では,現場にエンドユーザコンピューティングでやらせてしまえば情報システム部門は楽になりますよと,甘いことばで宣伝するベンダーが悪いのだろうか。
 ベンダーはツールを売るのが仕事だから,責められない。あるいは,ベンダー自身がほんとうにそう信じ込んでいるのかもしれない。ベンダーのセールス部隊には,情報システム部門の経験者は少ないだろう。
 やはり,全体管理をしないで現場にシステム開発させると,将来どうなるか想像できない,近視眼の情報システム部門に責任がある。
 中央で集中管理しなければ,エンドユーザコンピューティングは破綻する。
 しかし,真に責任があるのは,そういう情報システム部門にしてしまった経営者自身である。

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コメント

Noteを使っている「大企業」の末端ユーザのひとりです.
私の所属する会社でも,記事でご指摘のとおり,たくさんのDBが乱立しもはや収拾がつかなくなっているのを実感していまう
>やはり,全体管理をしないで現場にシステム開発させると,将来どうなるか想像できない,近視眼の情報システム部門に責任がある。
>中央で集中管理しなければ,エンドユーザコンピューティングは破綻する。
ただ,逆の視点もあるかとおもいます.
中央で集中でしっかり管理すれば,コンピューティング
としての「管理」はうまくいくでしょうが,
現場での融通がきかなければ,そんなDBには
有効な(生きた)情報は何もはいりません.
結局,きれいに「管理された」,誰も2度と
見ない,形ばかりの「情報」が,整然と並ぶ
だけになってしまうのではないでしょうか?.
システム管理部門はそれで仕事はおわりなのかも
しれませんが.

投稿: kotatsuneko | 2008年5月 3日 (土) 10時48分

 kotatsunekoさん,はじめまして。happy01

|中央で集中でしっかり管理すれば,コンピューティング
|としての「管理」はうまくいくでしょうが,
|現場での融通がきかなければ,そんなDBには
|有効な(生きた)情報は何もはいりません.
|結局,きれいに「管理された」,誰も2度と
|見ない,形ばかりの「情報」が,整然と並ぶ
|だけになってしまうのではないでしょうか?.
|システム管理部門はそれで仕事はおわりなのかも
|しれませんが.

 ここで書いた管理とは,コンピュータの管理ではなくて,情報システムのガバナンスでありマネジメントのことです。情報システム部門の実施する管理ですから。
 最近は,情報システムのことが,まちがって,「IT」と呼ばれているようなので,やむなくわたしも「IT」を使っていますが,ユーザ企業に「情報技術」は,変です。ベンダー企業にとっては,技術かもしれませんが。
 システム管理とは,コンピュータシステムの制御ではなくて,情報システムのガバナンスでありマネジメントのことです。その先にコントロールがあります。
 一にガバナンス,二にマネジメント,三四がなくて五にコントロールです。

 「管理」の意味合いが違うんだと思います。kotatsunekoさんのイメージする管理とは,多分にネガティブなもののようです。「管理社会」といった用語でイメージするような。

 システム管理部門の行動規範たる,「システム管理基準」を一度ご覧ください。ユーザニーズについても,しっかり書かれています。
http://www.saaj.or.jp/kijun/index.html

 kotatsunekoさんがイメージしている「管理」を実施しているNotesユーザ企業の話を聞いたことがあります。
 現場の意見を聞かずに,情報システム部門が独断で作成した使いづらいシステムを,現場が強制的に使わされているそうです。

 なにごとも,過ぎたるは及ばざるが如しで。
 ユーザ部門で好き勝手に開発していいよの放任主義,ユーザ部門の要望なんてきいてられないよの独断主義,両極端ですが,どちらも,情報システム部門が弱体化して,パワー不足になっているのが原因のようです。
 ユーザと協調しながらシステム構築するためには,優秀なシステムエンジニアが何人も必要となります。人件費が高くつくように感じられますが,長期的視野に立てば,結局,安く付くはずです。
 短期的にコスト削減した場合には,将来,ケチった金額以上のしっぺがえしが来ます。

投稿: 元木>kotatsunekoさん | 2008年5月 7日 (水) 19時03分

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